『きみの遠い故郷へ』(ウィル・ノース著、田口俊樹訳、文藝春秋)

c0077412_942340.jpg熟年男女のこの上なく爽やかな純愛物語。
ふたりの思い出の山に遺灰を撒いて欲しい、という別れた妻の望みをかなえるために、アレックはヒースロー空港からの全行程を歩いてウエールズの小さな町ドルゲライ近くにやってくる。その土地でフィオナは、化学物質アレルギーに苦しむ牧畜業の夫エドワードの世話をしながらB&Bを一人で切り盛りしている。フィオナは歩いてくるアレックを視野にとらえた時に、そしてアレックはフィオナにドルゲライへの道を尋ねた時に、相手になにか特別なものを感じたのだった。こうして一目惚れのようにして始まったふたりの恋は1999年4月10日から4月18日までの一週間続き、そこでぷつりと断ち切られる。
ただし、この物語は蜻蛉のような恋の物語でも、悲恋物語でもないことはエピローグで始めから明かされている。そしてエピローグで明かされているとおりのことと、それにプラスしてさまざまなことが最後に付け加えられた2005年12月18日の章で語られるという、構成的にも内容的にも非常によくできた(うまくできすぎの)物語。クリスマスに読むのにぴったりの作品ではあった。(2009.12.25記)

☆アレックが元妻の遺灰を撒くためにラダー・イドリス山に登る場面は、霧に撒かれたり崖から滑落しそうになったり、長大な滝に出くわしたり、とそうとうに難易度の高い山のようです。北国で、季節もまだ4月であり、登山道が整備されていないせいもあるかもしれませんが、それにしてもウエールズにそんなすごい山が?と思って調べてみたら、標高は893mでした。納得できたような、やはり納得できないような…。
ところで、アレックはカーター大統領のスピーチ・ライターをしていたことになっていますが、作者も実際にクリントン大統領やゴア副大統領のゴーストライターを務めたことがあるそうです。日本の首相も後々恋愛小説をものするような人物をゴーストライターにしたらもう少し魅力的な演説ができるのではないかしらねえ?
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by nishinayuu | 2010-02-25 09:42 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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