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『悪童日記』(アゴタ・クリストフ著、堀茂樹訳、早川書房)

c0077412_1052289.jpgタイトルのイメージのせいでなかなか読む気にならなかった作品である。「悪童」といえば「いたずらっ子」のことだから、悪ガキか、どうしようもない不良少年の話かもしれないと思ったからだ。訳者によると、原題の直訳は「大判の帳面」だが作品の内容をより具体的に――そしてやや反語的に――イメージさせることを狙って『悪童日記』としたということだ。しかし、このタイトルは違うのではないか、むしろ「大判の帳面」のほうがよかったのではないか、というのが読み終わっての感想である。これはいわゆる「悪童」の話ではない。厳しい状況に放り込まれた子どもたちが、並外れた知恵と精神力によって生きていく話なのだ。

時代も場所も明記されていないが、内容から時代は第二次大戦の末期から戦後にかけて、場所はオーストリア国境に近いハンガリーの小さな田舎町であると推察できる。語り手の「ぼくら」――小学校低学年とおぼしき双子の兄弟――はブダペストからおばあちゃんのところに疎開してくる。おばあちゃんにしてみれば、娘がどこかで勝手に生んで、今度は勝手に置いていった双子であり、面倒を見る気はさらさらない。そもそも、亭主を殺したという噂もある、魔女のようなおばあちゃんなのだ。しかし双子のほうもただ者ではない。おばあちゃんの家で自分たちにできる仕事をてきぱきとやってのけて居場所を確保し、「鍛錬」によってさまざまな苦痛に耐えられるように心身を鍛え、おばあちゃんや周りの人たちと時には果敢に対決し、時には折り合う道を見つけていく。そして見たり聞いたり実行した事物をあるがままに記すために、自分たちで作った独特のルールに従って日記を綴っていく。(2009.12.3記)

☆カバーの裏にある作者の顔写真、私が思い描いていた「おばあちゃん」のイメージにそっくりだったので、思わず笑ってしまいました。すごいおばあちゃんを生み出したすごい作家の顔として納得しました。
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by nishinayuu | 2010-02-10 10:05 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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