「ほっ」と。キャンペーン

『シャボン玉ピストル大騒動』(ポール・ギャリコ著、高松二郎訳、早川書房)

c0077412_23133822.jpgポール・ギャリコ(1897~1976)の最後の作品。
科学者を自認する9歳半の少年ジュリアンは、ある朝早く両親に見つからないように家を出る。自分が発明した「シャボン玉ピストル」の特許を取って、自分を無視しているパパを見返してやるつもりなのだ。荷物はスーツケース一つ。その中にはサン・ディエゴからワシントンDCへの長旅に備えて、下着の替え2枚、ソックス2足、ワイシャツ1枚、歯ブラシ、ヘアブラシ、そしてツナ・フィッシュ・サンドウィッチの材料が入れてある。
ジュリアンが旅の出発点であるバス・ターミナルに着くと、すでに大勢の人がバスの出発を待っていた。母親と7人の子どもという大家族の一行、逃走中の殺人犯ウィルクス、ベトナム帰還兵のマーシャル、優しそうな男グレシャム、マージとビルの高校生カップル、アメリカ陸軍軍需局のシソン大佐、KGBと関係のあるスパイ・アロン、不思議な形の楽器ケースを持った色黒の外国人バルザール、などである。これらの人びとと、初めての一人旅という緊張からくるさまざまな困難を切り抜けたジュリアンを乗せて、午前3時10分、バスはサン・ディエゴを出発する。
道中では土砂崩れのためにモーテルで一泊することを余儀なくされたり、ハイジャック事件が起こったりし、そのたびに最初は29名だった乗客が一人また一人とバスを去っていって運転手を嘆かせる。そしてついにジュリアンもバスから逃げ出すことになる。
一人のあどけない少年が、夢と希望と驚きと危険に満ちた旅を通して人びとの善意に触れる一方、悪意や裏切りに出逢いながら成長していく物語で、多彩な登場人物とスピード感のある展開で最後まで一気に読ませる。失望から希望へと転じる結末もいい。(2009.11.7記)
[PR]
by nishinayuu | 2010-01-10 23:13 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/13454796
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 『人形つかい』(ロバート・A・... 「サーラのとりこ」  特派員メ... >>