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『悪い仲間』(アンガス・ウィルソン著、工藤昭雄・鈴木寧訳、白水社)

c0077412_1051429.jpg白水社「新しい世界の短編」シリーズの7(1968年4月20日発行)。12編の作品が収録されている。作者は1913年にイングランドの裕福な中産階級の家に生まれたが、その後家計が逼迫したため苦労してオックスフォードを卒業したという。1949年に出た『悪い仲間』が作者の最初の短編集である。
ここには第1次大戦の名残が色濃い時期の中流階級の人びとの世界が描き出されているが、それは社会的・経済的基盤を失っていてもなお従来の生活意識から抜け出せないでいる人びとの群像である。ナポレオン戦争の頃の社会がテーマになっている『虚栄の市』(Vanity Fair, Thackeray)にも、下の階級の人間を見下しながら彼らに依存せずには暮らせない中産階級の人びとが描かれており、時が流れても変わることのない階級社会の病根の深さを見る思いがする。
『涼風をいれろ』――エルスペスは独善的なミセス・サールに痛快な一発を食らわしたのだが、打撃を受けたのはその一発の余波を受けた夫のサール教授のほうだった。
『一族再会』――人びとは、たとえイングランド人であっても植民地生まれは一段下とみなすのだ。
『底抜けパーティー』――階級差を縮めようとする努力は疲れるだけで報われない。
『悪い仲間』――自由で公平な思想の持ち主として振る舞っていたヴァイも、つまるところは偏見の塊ともいえる夫と大差はなかった。
『変わり者ぞろい』――変わり者を自称する一族の許を訪れた青年は、抵抗虚しく取り込まれてしまう。
『きいちごジャム』――はじめは「かわいい童女」とも見えた二人の老女が、次第に「恐ろしい魔女」の様相を呈していく。(2009.11.5記)
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by nishinayuu | 2010-01-04 10:02 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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