『ウメ子』(阿川佐和子著、小学館)

c0077412_9441954.jpg読書会「かんあおい」2009年12月の課題図書。
語り手は幼稚園児のみよちゃん。お兄ちゃんも同じ幼稚園児なので、たぶん年子の兄妹である。二人が通う幼稚園に、ある日転園生がやってくる。それがこの物語の主人公のウメ子で、初日の服装は真っ赤なブラウスに真っ赤なエプロンドレスだった。次の日もその次の日も、ウメ子は毎日派手で奇抜な服を着てきた。ロビンフッドのように上から下まで緑色のこともあった。またウメ子は、それまでのボスだったユカちゃんのお節介を毅然と振り払って、男の子たちの尊敬を集めた。みよちゃんはそんなウメ子に大いに関心を抱いたが、なかなか近づけないでいた。
ある日、ジャングルジムのてっぺんで遠くを眺めていたウメ子が、見上げているみよちゃんに気がついて声をかけてきた。こうしてみよちゃんはウメ子の友だちになり、ウメ子のお家に行き、ウメ子のお母さんにも会ったが、ウメ子の家にはお父さんがいなかった。ウメ子は、もう少し大きくなったらお父さんを探しに行く、みよちゃんといっしょに、と言った。そしてそのことばどおり、ある日みよちゃんとウメ子は家出をして、ウメ子のお父さんに会いに行くことになった。
幼稚園児とは思えないほどしっかりしていて行動力のあるウメ子の、みよちゃんをまきこんだ「父を訪ねて数百㌔」という、愉快でほろりとさせられる物語。幼稚園児が語り手という不自然な設定なのに語り口に不自然さがなく、素直に物語に入っていける。語り手とウメ子が十数年後に再会して友情を確かめあう場面も周到に付け加えられていて、気持ちよく読み終えることができる。(2009.10.26記)
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by nishinayuu | 2010-01-01 09:44 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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