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『ローマの物語』(アルベルト・モラヴィア著、米川良夫訳、白水社)

『ローマの物語』(アルベルト・モラヴィア著、米川良夫訳、白水社)_c0077412_10505653.jpg白水社「新しい世界の短編」シリーズの2(1967年11月20日発行)。全部で19編の短編が収録されている。いずれも「ぼく」あるいは「わたし」と自称する男たちが、ありふれた、あるいは数奇な、時におかしく時にもの悲しく、時にはぞっとするようなさまざまな体験を語るのであるが、そのストーリー展開の巧みなこと。これぞ短編小説、という感じの作品が並んでいて飽きさせない。特に印象的だった作品は以下の通り。

*「ではまた、さようなら」――刑務所を出るときにふと見かけた所長に「ではまた、所長さん、さようなら」と声をかけてしまった「ぼく」のたどった運命は…。
*「暑さの悪戯」――熱気のこもる狭い家とうるさい家族にうんざりした一家の主である「ぼく」は衝動的に家出をしてしまうが、テヴェレ川の向こう側にある空き地でより凄まじい貧しさのなかに取り込まれそうになり…。
*「ノーとは言わない」――夫のことばにいちいち逆らう妻のアデーレを、口論のあげくに失った「ぼく」が見つけた新しい相手は、「ノーとは言わないわ」と言うジュリアだった。
*「カテリーナ」――聖女のようだった妻が結婚して2年後に性格が変わって悪魔のようになってしまい、「ぼく」は自殺を考えるほど追い詰められるが、1943年、ローマに空襲が始まって…。
*「ちょうどあんたの番がきた」――ごみ取り人夫の「ぼく」が恋をした。「ぼく」は彼女に自分の仕事を知られたらお終いだと思っていた。彼女は実は、ごみ取り人夫が好きな女性だったのに。
*「スープでも飲みな」――60近くになった椅子職人の「わたし」が再婚した天使のようなジュディッタは、結婚したとたんに悪魔になってしまった。途方に暮れ、絶望的になっている「わたし」のところに、ある日電話がかかってくる。「スープでも飲みな(しっかりしろの意)」というその胴間声の持ち主は…?
(2009.10.24記)

☆画像はFabbri-RCS Libriのものです。

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by nishinayuu | 2009-12-28 10:11 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

読書と韓国語学習の備忘録です。


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