「ほっ」と。キャンペーン

『木立の中の日々』(マルグリット・デュラス著、平岡篤頼訳、白水社)

c0077412_1063683.jpg白水社の「新しい世界の短編」シリーズの1(1967年10月20日発行)。今となっては「古い世界の短編」となってしまったが、この手の作品が大好きだった頃を懐かしく思い出しながら読んだ。『木立の中の日々』、『ボア』、『ドダン夫人』、『工事現場』の4作品が収録されている。
『木立の中の日々』はほとんど全体が会話から成り立っており、地の文も「ト書き」のように短く、状況や会話の内容を解き明かす役割を担っていない。自分の工場を息子が継いでくれたら、という淡い期待を抱いて息子の許を訪れた年老いた母親と、きちんとした職に就かずにその日その日を適当に過ごしていたい息子、そんな息子に邪魔にされながらしがみついている気だてのいい娘、という三者三様の登場人物たちが、噛み合わない会話を交わしながら短い出会いの時をやり過ごす。不条理劇のようでもあり、人情劇のようでもある芝居、といった雰囲気の作品である。
『ボア』と『工事現場』は上記のものとは逆に、一人の人物の目に映るもの、心に浮かぶことを綴った「語り」だけで成り立っている作品である。その「語り」の文は持って回った表現や、収拾がつかなくなりそうなほどに複雑に入り組んだ構造を持って延々と綴られて行く。かつての「新しい文学」の特徴の一つだったこの文体は、初めはとっつきにくいが読んでいくうちに快感となっていく、不思議な魅力にあふれる文体である。
『ドダン夫人』は上記の2種類の間をゆくような作品で、適度に会話があり、適度に地の文があって読みやすい。アパートの門番であるドダン夫人(60歳の女)と道路掃除人であるガストン(30歳の男)の仕事ぶりや二人の交わすおしゃべりから、パリの路地の主人公たちの日常と人生が浮かび上がる。(2009.10.9記)
[PR]
by nishinayuu | 2009-12-09 10:06 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/13186749
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 「マナー違反をピッ」   特派... 『スニおばさん』(玄基榮著、波... >>