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『赤い指』(東野圭吾著、講談社)

c0077412_1051329.jpg読書会「かんあおい」2009年12月の課題図書。
始めのほうに小学校低学年の女児が死体で見つかる、という陰惨な場面があって、犯人が中学生の少年であることも疑いの余地はなく、読み進めるのがためらわれる。ぎすぎすした家庭、壊れた家庭教育などをテーマにした話だったらマスコミで毎日のように報道されているから、わざわざ小説で読まなくても、と思われるからだ。それでもとにかく我慢して読んでいると、別のテーマが浮かび上がってきて、こちらの方が主たるテーマであることが見えてくる。
前原家の家族構成はサラリーマンの昭夫、妻の八重子、中学生の直巳、昭夫の母である政恵の4人。昭夫は仕事人間で家のことは八重子にまかせっきり、というよくあるパターンで、八重子は直巳のわがままは何でも受け入れ、姑のことは毛嫌いして食事の世話もしない、という極端な人間に描かれている。直巳が事件を起こしてからの八重子の言動も常軌を逸しているが、昭夫がそんな八重子のペースに引きずられていくさまはリアリティーがある。この部分はこの作品の読ませどころの一つであるが、ここで注目すべきは母親の政恵の言動である。
冒頭に、刑事・松宮修平が死の病に取り憑かれている伯父・加賀隆正を病院に見舞う場面がある。修平は、この伯父の息子で同じく刑事である加賀恭一郎と組んでこの事件を担当することになる。この隆正と恭一郎親子の物語と、政恵と昭夫親子の物語がこの作品の主要テーマであろう。その分、直巳と八重子の物語は影が薄れて、尻切れトンボの感じのまま終わってしまう。このふたりのことは頭から払いのけたいので、それはそれでかまわないのだが、直巳や八重子を登場させず、少女殺し事件もないままに主要テーマを語ってくれたらよかったのに……と、無理な注文を付けたくなった。(2009.9.30記)
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by nishinayuu | 2009-11-24 10:05 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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