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『桜桃』(太宰治著、実業之日本社)

c0077412_13255254.jpg読書会の2009年9月の課題図書が『人間失格』なので、手始めに表題作と『グッド・バイ』の2編を「青空文庫」で読んだ。底本は『桜桃』が実業之日本社(1948年)で、『グッド・バイ』が朝日評論(1948年)だという。
『桜桃』は、長男が4歳になっても口もきけず歩くこともできない夫婦の日常にふと生じた心のずれが、夫の立場から描かれている。寡黙な妻が漏らした一言に妻の本音を感じ取った夫が胸の内でつぶやく次のことばがおもしろい。
「自分の思っていることをはっきり主張できる人はやけ酒なんか飲まない。」
女に酒飲みの少ないのは、この理由からである、などと胸の内で屁理屈をこねながら、悔し紛れ、破れかぶれで夫はやけ酒を飲みに行ってしまうのである。
『グッド・バイ』は色男が女たちと手を切るために利用しようとして、女たちを圧倒する絶世の美人に声をかけるが、それがなんと金の亡者で大食いの女。利用するどころか振り回されそうになっている。これから、というところで話が途切れてしまう未完の小説で、ちょっと残念。(2009.9.7記)

☆「絶世の美人」は若いのに担ぎ屋をして荒稼ぎをしているしたたかな女。そういえば昔々、実家の裏手に(向こうから見ればこちらが裏手だが)住んでいたおばあさんも担ぎ屋をやっていました。小柄でしわだらけなのに、大きくて重そうな荷物を背負って歩くたくましい女性でした。荷物の中身は「闇米」で、我が家も時々お世話になっていました。
なお、画像は文春文庫のものです。
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by nishinayuu | 2009-10-29 13:25 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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