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『月魚』(三浦しをん著、角川文庫)

c0077412_10144728.jpgタイトルは「ゲツギョ」と読む。巻末の出版社や出版年の掲載されているページではじめてその読み方がわかった。どうせなら巻頭のページにある「月魚」にルビをつけて欲しかった。登場人物たちの名前には初出のときにちゃんとルビがついているのだから。タイトルに関してもうひとつ、おや、と思ったのは ‘fish on the moon’ という英語のタイトル(あるいはタイトルの英訳?)がついていること。新しい作家の本というのはこんなところも新しい。
さて本文は次のように始まる。
その細い道の前に、オレンジ色の灯りがともった。/古書店『無窮堂』の外灯だ。瀬名垣太一は立ち止まり、煙草に火をつけた。/夕闇が迫っている。道の両側は、都心からの距離を考えれば今どき珍しい、濃縮された闇を貯蔵する雑木林だ。街灯はあるが、それも木々に覆い隠されている。瀬名垣の訪れを予知したかのごとく、『無窮堂』の灯りは薄暗い道を淡い光で照らした。
読者を一気に物語の世界に引き込んでしまう、魅力的な書き出しである。主人公は本田真志喜と瀬名垣太一という二人の青年で、真志喜は「無窮堂」の店主、瀬名垣は店を持たない古本業者である。瀬名垣が「無窮堂」から遠ざかっているのはなぜか。そんな瀬名垣が、なにかいいわけを作っては時たま様子を見にやってくるのはなぜか。そもそも二人の過去に何があったのか――などがおいおい明かされていく。二人がポンコツの軽トラックで繰り出した古本買い出しの旅が物語のハイライトである。(2009.8.30記)

☆この作家は以前『むかしのはなし』を読んだときはピンときませんでしたが、今回、再挑戦してみて正解でした。真志喜と瀬名垣のその後が知りたくなりました。この作家のお父さんである三浦佑之氏の古事記の現代語訳も気に入っています。ただし図書館でときどき立ち読みするだけですが。
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by nishinayuu | 2009-10-19 10:04 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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