『クオーレ』(E・デ・アミーチス著、和田忠彦訳、新潮文庫)

c0077412_8371717.jpg1886年に出版された児童文学。1861年のイタリア統一による高揚感のただ中にあるトリノを舞台に、小学校3年生の少年エンリーコの一年間がエンリーコの日記という形で綴られている。新しい国イタリアの将来を託す少年たちへの期待を込めた「愛国小説」といったところである。
エンリーコの日記の合間に合間に、「とうさん」「かあさん」「ねえさん」たちからエンリーコに宛てた手紙や、月ごとに担任の先生が生徒たちに読んで聞かせる「今月のお話」が挿入されている。家族の手紙からはこの一家が、知識階級に属するリベラルな両親と素直で賢い姉弟という、模範的で理想的な家族で構成されていることが浮かび上がる。また、「今月の話」にはよく知られた「母を訪ねて三千里」の他、国のために闘う勇敢な愛国少年や、自分の身を顧みずに人のために尽くす健気な少年たちを主人公にした、本文からは独立した物語が収められている。
エンリーコを取り巻く少年たちはそれぞれ独自のエピソードとともに語られており、その姿がくっきりと浮かび上がってくる。大柄で紳士的で誰からも信頼されているガッローネ、成績抜群、容姿端麗で性格も優れているデロッシ、炭屋の息子で猫皮のベレー帽を愛用しているコレッティ、左官屋の息子でうさぎ顔が得意なアントニオ、がんばり屋で本集めが趣味のスタルディ、雑貨屋の息子で商売に長けたガロッフィ、野菜売りの子で片腕が不自由なクロッシ、背中が曲がっているネッリ、鍛冶屋の息子で小さいプレコッシ。エンリーコとデロッシ以外はみんな労働者階級の子どもたちである。他に性格が悪いお坊ちゃんのノービスや少年院送りになるフランティなども登場するが、悪童たちはあくまでも添え物である。(2009.8.29記)

☆気になったこと-その1。家族の手紙の内容が、前後の日記の内容となんの繋がりもなくて唐突な感じのするところが何カ所かあります。
気になったこと-その2。イタリアの各地方を褒めことばとともに列挙している一文の中で、シシリアの都市パレルモにだけ「恐ろしい」という形容詞が――。マフィアの連想?まさかね。もしかしたら「勇猛な」といったような意味でしょうか。
気になったこと-その3。友だちにも先生にも「かわいそうな」という形容詞がやたらに使われていて、不自然な感じがします。場合によって「気の毒な」「痛々しい」「いたましい」「あわれな」「いじらしい」「おいたわしい」など、いくらでも他の言い方があると思われるのに。
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by nishinayuu | 2009-10-15 08:37 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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