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『夜のピクニック』(恩田陸著、新潮社)

c0077412_9442726.jpg数年前のベストセラー小説を遅まきながら読んだ。学校行事としての鍛錬歩行というものにはちょっとついて行けないものを感じたけれども、その苛酷な行事を乗り切って成長した登場人物たちの、健康で爽やかな青春には拍手を送りたい。
北高(東北地方にある進学校という設定)は毎年秋に、全校生徒が参加する鍛錬歩行祭という行事を行う。朝の8時から翌朝の8時まで歩くというこの行事は、夜中に数時間の仮眠を挟んで前半が団体歩行、後半が自由歩行と決められている。前半はクラス事に二列縦隊で歩くのだが、後半は全校生徒が一斉にスタートしてゴールをめざす。ゴール到着の順位を競う生徒は少数派で、大半の生徒にとっては歩き通すことが最大の目標である。体力と気力が限界まで試され、落伍者はバスで回収される、という苛酷な行事なのだ。それでもというか、だからこそというか、生徒たちはそれぞれ期待と決意をもってこの行事に臨む。
甲田貴子はこの行事の間に西脇融に声をかけよう、と決心していた。二人とも母子家庭で育ったが、実は二人の父親は同一人物だった。偶然同じ高校に入学して以来、貴子は常に融の刺すような視線を感じていた。融と普通に接したいと思う貴子と、貴子の存在が気に障ってしかたがない融は、3年生になって同じクラスになっても一度も言葉を交わしていない。融は一日も早く卒業して貴子との忌まわしい因縁から逃れたいと思っている。一方貴子は融とふつうに言葉を交わせるようになりたいと思っている。貴子にとって、夜中に全校生徒が歩くというこの特殊な状況は、融に声をかける絶好の、そしてもしかしたら最初にして最後の機会かもしれないのだった。(2009.8.24記)
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by nishinayuu | 2009-10-12 09:44 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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