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『The Voyages of Doctor Dolittle』(Hugh Lofting著)

c0077412_9573612.jpg『ドリトル先生航海記』(井伏鱒二訳)の原書。『ドリトル先生アフリカ行き』に次ぐ、ドリトル先生シリーズの二作目。なんともユーモラスな挿絵は作者ロフティングが自ら描いている。
物語の語り手は9歳6ヶ月の少年トミー・スタビンズ。学校にも通わせてもらえない、貧しい労働者階級の少年であるが、ふとしたことから大きな庭のある家にたくさんの動物と住んでいる博物学者のドリトル先生と知りあう。そして先生の助手として長い航海に出ることになるのであるが、出かける前にまず「世捨て人のルカ」の裁判事件があり、ここでドリトル先生の立派な人柄とすばらしい才能が読者に印象づけられる。全6部のうち第3部になってようやく航海に出発したと思ったら、今度は船内で次から次へと密航者が見つかり、その一人に食料も食べ尽くされていることがわかる。やむなくスペイン領のある島に寄り道し、闘牛場でドリトル先生が特殊能力を発揮して資金を稼ぐ。その後も悪天候で難船したり、目的地の島に着いてからは種族間の戦争に巻き込まれたり、戦争のあとは島の王様に祭り上げられて王様稼業に追われたり、と大変な目に遭うが、ドリトル先生はとにかくタフで、八面六臂の大活躍をする。圧巻はレッド・インディアンの博物学者ロング・アローを救出する場面と、南氷洋近くまで流されてしまった浮き島を熱帯地域まで戻し、しかも海底に固定させるエピソード。数々の偉業を成し遂げたドリトル先生の一行をイギリスまで運ぶのが巨大な海カタツムリ、というところがいちばん奇想天外ですばらしい。
一行の一人にバンボという黒人の王子がいる。オクスフォードの学生でドリトル先生の信用も厚い好青年であるが、ときどき「野蛮人」丸出しの発言をして先生の度肝を抜く。このバンボの描き方を始めとして、ところどころに現在では許されない描写があって、1960年代、1970年代のアメリカではこの作品も作者も人種差別的だとして糾弾されたという。すっかり葬られる可能性もあったのに生き残れたのは、この作品にそれだけの魅力があったからではないだろうか。(2009.8.11記)
☆この物語を初めて読んだのは小学校の3、4年生の頃と記憶しています。初めて自分のお小遣いで買った本で、講談社の「少年少女世界文学全集」の一冊でした。グレーの紙箱入り、A5判の本でしたが、講談社のサイトには1959年刊行の豪華本シリーズのことしか出ていません。豪華本ではない非豪華本全集のことを、よく覚えている、という人が私の周りには何人もいるのですけれど。
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by nishinayuu | 2009-09-28 09:57 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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