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『祭日』(リルケ著、森林太郎訳、岩波書店)

c0077412_1110385.jpgこのところ書店にも図書館にも出かける元気が出ず、「青空文庫」と「グーテンベルク・プロジェクト」さまさまの毎日である。というわけでこの本もまた「青空文庫」のお世話になった。
『祭日』は、主人公スタニスラウス・フォン・ヰックとその一族が、先代の当主アントン・フォン・ヰックの8回忌の祭に集った時の様子を描いた短編。舞台が舞台なので登場人物が多く、名前と親族関係を頭に入れるのが結構大変である。前述の二人の他に、スタニスラウスの妹のリヒテル少佐夫人、アントンの娘でスタニスラウスの姪であるイレエネ・ホルン、イレエネの妹・フリデリイケ、イレエネの息子・オズワルド、「親族関係が朧気な」アウグステをばさん、行事の時だけやって来る元従僕のヨハン爺さん、それから名前だけ登場する先々代のペエテル様、という具合。
会堂で祈りを捧げたあと、一同はこの日の主人役であるイレエネの家で食卓を囲む。そこで一同の関心を惹きつけた話題は、部屋にあるたくさんの椅子のうち、どの椅子で誰が息を引き取ったか、その人の最後のことばはなんだったか、というものだった。そんななかで、給仕してまわっていた老僕のヨハン爺さんがスタニスラウスの席にやってくる。彼が老僕に親しく話しかけると、感激した老僕は「ペエテル様!」と応える。目も耳も悪い老僕は彼を先々代の主人と勘違いしたのだ。大きな衝撃を受けたスタニスラウスは、部屋の中でただ一つ、まだ誰もその上で死んだことのない椅子のところに行って座り込む。彼はもうその椅子から離れることはないことを悟り、自分の「最後のことば」を何にしようかと思いめぐらすのだった。(2009.8.4記)

☆画像は『諸国物語 上』(筑摩書房)のものです。
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by nishinayuu | 2009-09-21 10:12 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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