『Hotel du Lac』(Anita Brookner著、 Penguin)

c0077412_10405741.gifブッカー賞の作家、アニータ・ブルックナーの作品を手にしたのは、2000年に『家族の肖像』を読んで以来久しぶりのことだった。しかも『家族の肖像』の内容は覚えていないので、初めて読む作家という感じである。タイトルは『湖畔のホテル』だが、『秋のホテル』という題の翻訳本が晶文社から出ている。

主人公は30代後半のイギリス女性。小説家を業としていて、ヴァージニア・ウルフに似ている、と言われたりする(これは作家評としては大讃辞かも知れないが、女性評としてはどう受け取るべきなのだろうか)。妻子ある男性との関係を清算しようと思い立って結婚を考えるが、式の当日にドタキャン、という「不始末」を起こす。ことが鎮静化するまでここにいてはいけない、という友人に追いたてられるようにして、スイスのホテルに一人でやって来る。シーズンを過ぎた閑散としたホテルには、老人ホーム代わりに滞在させられている老女やら、犬を連れた節食障害の女性やら、大富豪でいやに人目を引く派手な母娘やらが滞在している。はじめは距離を置いて彼らを観察していた主人公も、しだいに否応なく彼らの日々の中に取り込まれていく。
しっとりとした、味わい深い作品である。
(2009.7.20記)

☆ブックオフの棚に珍しくペンギンブックスがあったので、ラッキーとばかりに飛びつきました。家に帰ってからよく見てみると、なんとあちこちに書き込みが。書き込みのある物はいっさい買い取らないはずのブックオフの書棚に、こういう物が置かれた経緯を知りたいものです。
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by nishinayuu | 2009-09-07 10:41 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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