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『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー著、亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫)

c0077412_9423366.jpgカラマーゾフがより読みやすくなった画期的な新訳、と評判の本書が出て以来、猫も杓子も読んでいるようなので、猫の一人としては読まずばなるまい、と考えて読んでみた。確かに読みやすく、退屈せずに読めた。ただ、昔、米川正夫訳のカラマーゾフを河出書房の「カラー版世界文学全集」第18巻で読んだときも、特に難しいとも思わず、興味深く読んだ、という記憶がある。ただし、米川訳は誰かに貸したきり手許に戻ってこなかったため、(今更買ったり借りたりも面倒で)両者を読み比べることができず、どこがどう新しいのか、どれくらい読みやすくなっているのかは、残念ながらさっぱりわからない。
内容に関して印象的なのは、登場人物たちがひどく饒舌なこと。無教養を標榜しつつ教養を垂れ流すフョードルがその代表格だ。ホフラコーワ夫人、グルーシェニカ、カテリーナなどの女性陣もよくしゃべる。もう一つ印象的なのは、男たちの言動が比較的筋道だっているように見えるのに反して、女性たちのそれは非合理的で突拍子もない感じがする。それはおそらく、男たちについてはその心理状態や思考過程が詳細に描写されているのに反して、女たちに関してはそれらの描写が少ないせいではないだろうか。あくまでも男性作家による男性を描いた小説なのだ。
「新訳」で画期的なことの一つは、長文で詳しい「解題」がついていることだろう。全5巻のうち第5巻は、短い「エピローグ」が収録されているだけで、一冊のほとんどのページがこの「解題」で埋め尽くされている。「エピローグ」を第4巻に収めれば全4巻ですむのに、と出版社の意図を怪しみながらも、とにかく{解題}読んでみると、これがなかなか面白いし、ためになる。この小説には書かれずに終わった第二部があった、ということで、確かにそう考えれば納得できる部分がいろいろあるのだ。(2009.7.18記)
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by nishinayuu | 2009-09-03 09:42 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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