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『ゼバスチアンからの電話』(イリーナ・コルシュノフ著、石川素子・吉原高志共訳、福武書店)

c0077412_9394125.jpg読書会「かんあおい」2009年8月の課題図書。原書は1981年の出版。ギムナジウム10年生(16~17歳)のザビーネを語り手にして、ある年の春からクリスまでの日々を描いた青少年向けの作品。

ザビーネは両親、弟と一緒にミュンヘンに住んでいた。ところがある日、父が農村地帯にあるエッラーリンクへの転居を一人で決めてしまう。ローンのために切り詰めた生活を余儀なくされること、買い物にも通学にも非常な不便を強いられること、友人たちと別れねばならないことなど、家族のものにはなんのメリットもない転居だが、庭仕事ができるという期待で父は上機嫌である。そんな身勝手な父に逆らうことなく、祖母から譲り受けたビーダマイアーの家具を手放してまで協力する母に、ザビーネは反発を覚える。
その反発はザビーネ自身に向けられたものでもあった。実はいつの間にかザビーネも母と同じく、自分の夢や希望を犠牲にしてでも夫や恋人のために尽くしたいと思うようになっていたのだった。
ザビーネはもともと、将来大学で化学を勉強したいと考えていた。ところが彼女のその目標は、10ヶ月前に3年上のゼバスチアンと知りあってから、ヴァイオリニストをめざしている彼のために身の回りの世話をし、演奏旅行について回りたい、という夢に席を譲ってしまっていた。ヴァイオリンを第一に考えていて、ザビーネを重たく感じだしたゼバスチアンから、きみも何か大事なものを見つけたほうがいい、と言われたザビーネは、ゼバスチアンとの連絡を絶ったまま引っ越してしまう。

昔ながらの女性の役割に縛られている母。そんな母を疎ましく思いながら同じ道に入り込みそうになっている娘。そんな二人がそうした女性の生き方に疑問を抱くようになり、自己実現をめざす一個の人間として生き始める物語。(2009.7.4記)
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by nishinayuu | 2009-08-20 09:36 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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