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『私の美しい庭園』(シムユンギョン著、ハンギョレ新聞社)

c0077412_14553872.jpg『나의 아름다운 정원』(심윤경著、 한겨레신문사)
1972年生まれの作家が2002年7月に発表し、第7回ハンギョレ文学賞を受賞した長編小説。
ソウル市の北西部にある仁旺山は、鍾路区・清雲洞と西大門区・弘済洞にまたがる標高338mの小さな山で、家々が山肌に貼りつくように立ち並び、いわゆるサンドンネ(比較的貧しい住宅街)を形成している。麓から上に行くほど家は小さくなり、表門のない家が増える。そんななかに一軒だけ、立派な庭園のある三階建ての家がある。夏になると朱色の凌霄花が風に揺れ、山雀がツツピー、ツツピーと囀りながら飛び回るこの庭園が「私の美しい庭園」であり、主人公トングの少年時代の憧れを象徴する場所である。
トングの家はいちおう表門もある、別に貧しくはない家だったが、祖母と嫁である母の仲が険悪な上に父はやみくもに妻を押さえるだけという、子どもにとっては不幸な環境だった。しかもトングは三年生になってもハングルの読み書きができない「難読症」だった。それでも、歳の離れた妹のヨンジュの愛らしさと利発さが家族の救いとなり、担任教師・パクヨンウン先生の愛情と誠意がトングの将来を明るいものにしていた。しかし、1980年の春、「光州に住む祖母の誕生日祝いのため」という名目で休暇を取ったパク先生は、それきり戻ってこなかった。
学校では劣等生でも、妹をこよなく愛し家族の仲の悪さに心を痛める健気な少年トングに、次々に試練が襲いかかる。嫁と姑の徹底的な反目、威張っているだけで家族をまとめる術を知らない父親、そして1980年の光州などなど、韓国特有のテーマがびっしり詰まった、重苦しいけれども後味は悪くない小説である。(2009.6.25記)
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by nishinayuu | 2009-08-05 14:55 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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