『光の中に』(金史良著、青空文庫)

c0077412_1635468.jpg著者は1914年、日帝時代の平壌に生まれ、後に日本に渡って東京帝国大学を卒業。1942年に朝鮮に帰国した後、1950年に勃発した朝鮮戦争の最中に行方不明となった。
この作品は青空文庫で読んだ。同文庫には金史良の作品が他に4編収録されているので、それらも合わせて読んだ。いずれも底本は講談社版である。

『光の中に』――S大学協会(セツルメント)で活動している「私」は本名の南(ナン)ではなく南(ミナミ)先生で通っていた。無邪気な子どもたちと遊ぶにはそのほうがいいと考えていた「私」に、山田春夫という少年が「朝鮮人!」と罵声を浴びせ、いやがらせをしかけてくる。

『玄界灘密航』――1931年、著者は抗日闘争に呼応する休学事件に関与して平壌の学校を退学になる。この作品は退学後の著者が日本への密航を計画したときの揺れ動く心情を綴っている。

『故郷を想う』――平壌にすむ老母や親族たちに寄せる深い思いと、朝鮮という国への熱い思いを綴った短編。特に、深い姉弟の情けで結ばれた姉・特実(トクシル)を描いた部分は胸を打つ。

『荷』――1936年に「佐賀高等学校卒業記念誌」に発表した処女作。後に加筆されて『尹参事』となり、さらに改題されて『尹主事』となった。青空文庫には『尹主事』も収録されている。土壇場まで追い詰められた裸一貫の労働者の、悲劇とも喜劇ともつかない言動と境遇を描いたごく短い作品である。(2009.6.7記)

☆上の画像は「講談社文芸文庫」のものです。
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by nishinayuu | 2009-07-25 16:04 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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