『山羊座の腕輪』(ローズマリ・サトクリフ著、山本史郎訳、原書房)

c0077412_8535612.jpg歴史小説家として名高いサトクリフの「ローマ・ブリテンもの」の一つで、ローマ帝国の勢力がブリテン島にまで及んでいた紀元1世紀から5世紀にかけての物語。
第1章の舞台は西暦61年のロンディニウム、現在のロンドンである。主人公・ルシウス少年は、ワイン商を営む父の跡を継ぐのではなく、鷲の軍旗に従うローマ軍の兵士になりたいと願っていた。その願いは、ブリテンの土着民であるイケニ族の反乱により、ロンディニウムが戦乱と大虐殺の地となって陥落した結果として実現する。
第2章はハドリアヌスの長城が築かれつつある123年。主人公はローマ軍の百人隊長・ルシウスで、第1章のルシウスの孫に当たる。この章で、祖父のルシウスがローマ軍の兵士になったあと、戦功によって「山羊座の腕輪」をもらったことが明らかになる。
6章からなるこの物語の各章の主人公は、いずれもルシウス(ルキアヌス、ルシアン)という名を持ち、父祖から伝えられた「山羊座の腕輪」を一族の絆として受け継いでいく。六人のルシアスを通して「ブリテンのローマ人」の姿が鮮やかに浮かび上がる優れた児童文学である。(2009.6.2(2009.6.記)

☆ずいぶん前に同じ作者の『ともしびをかかげて』『第九軍団のワシ』を読みました。内容はほとんど忘れましたが、児童文学としては驚くほど格調の高い翻訳(猪熊葉子)に魅了されたことを覚えています。それにくらべると『山羊座の腕輪』はごくふつうの訳で、読み始めはもの足りない気もしましたが、そのうちにこれはこれでいい、と思えてきました。
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by nishinayuu | 2009-07-23 08:54 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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