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『ピエールとクロエ』(アンナ・ガヴァルダ著、飛幡祐規訳、新潮社)

c0077412_14571740.jpg読書会「かんあおい」2009年6月の課題図書。
ある日、クロエの夫アドリアンは、クロエと幼い二人の娘を残して別の女性のもとに走った。クロエにとっては青天の霹靂である。アドリアンを愛しているし、アドリアンも自分や娘たちを愛していると信じ込んでいたから。混乱し、悲嘆に暮れるクロエを、舅のピエールは車で田舎の家に連れて行く。そしてクロエと子どもたちに気晴らしをさせ、クロエに「出て行かないで欲しい」と語りかける。しかしクロエは、アドリアンが出て行くのを知っていて止めなかったピエールに反発する。何をするにも怖じ気づいていたアドリアンのために三年間、彼を大学に送ってからルーヴルの地下三階で自分の時間をむだにしたのに、一人前になったアドリアンは古い皮膚から脱皮したのだ、意地悪なパパの同情に満ちた目の前で、とクロエは苦々しく思うのだった。そんなクロエにむかって、普段は口数が少なかったピエールが「不幸の原因を作った人間の悲しみ」について語り始める。それはピエールが42歳のときに経験したマチルドという女性との恋の物語だった。
あと少し勇気があれば、家庭を捨てて別の人生が歩めたかも知れない、というピエールの話が、アドリアンを勇気づけることはあってもクロエを勇気づけることにはならないはずで、そこのところが今ひとつ納得できない。が、ピエールとクロエの、打てば響くようなことばのやりとりが快く、またピエールのクロエに対する思いやりと優しさがクロエの気持ちをほぐしてゆく過程は充分納得できる。舅と嫁という、あまり会話が成立しそうもない関係の二人に、率直で真摯でユーモアのあるやりとりをさせた、おしゃれな物語である。
(2009.5.26記)
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by nishinayuu | 2009-07-16 14:57 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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