『その歌声は天にあふれる』(ジャミラ・ガヴィン著、野の水生訳、徳間書店)

c0077412_10223742.jpg著者はインドに生まれ、11歳でイギリスに移住、現在はグロスターに住む女性。この作品で2000年度ウィットブレッド児童文学賞を受賞している。ただし、いわゆる児童向けの読み物ではなく、少なくとも中学生以上向け、どちらかというと成人向けの読み物である。
物語の舞台はイングランドのグロスターを中心とした地域。時は18世紀の半ば、貴族や一部の富裕層は別として、多くの人びとは貧しい生活と厳しい労働の中で一生を終えた時代である。嬰児殺しや子捨てが日常的に行われていたこの時代に生を受けた何人かの子どもたちがこの物語の主人公である。
一見したところ精神的にも身体的にもバランスがとれていないミーシャク。彼はいかがわしい闇取引で荒稼ぎをする父親に牛馬のごとくこき使われている。それとは対照的に音楽の才能に恵まれ、その才能を伸ばす機会にも恵まれたアレクサンダーとトマス。彼らは教会の聖歌隊で歌いながら友情を育む。同じく固い友情で結ばれたアーロンとトビー。白い肌のアーロンも漆黒の肌のトビーも同じ孤児院で育った。これらの少年たちの、長い間ばらばらだった人生の流れは、やがて一つに合流する運命にあった。
凄惨な場面と美しい音楽が絡み合いながら18世紀のイングランド社会を浮き彫りにしていく、読み応えのある物語。最後の最後にミーシャクがあっと驚く姿で登場するが、これはちょっと強引な印象が残る。(2009.5.19記)
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by nishinayuu | 2009-07-09 10:22 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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