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『星に願いを―さつき断景―』(重松 清著、新潮文庫)

c0077412_1015176.jpg読書会「かんあおい」2009年4月の課題図書。
1995年5月1日、オウム真理教教祖逮捕のXデーの有力候補とされた日から話は始まる。主な登場人物は15歳の高校生タカユキ、定年が近づいてきた勤め人のアサダ氏、30代の勤め人であるヤマグチさんの三人。この日、震災で「終わった」神戸の町でボランティアをしてきたタカユキはニュータウンの家に向かっている。長女の結婚式を迎えたアサダ氏はテレビに映るオウムの上祐の薄笑いと饒舌に腹を立てている。危うくサリン事件に巻き込まれそうになったヤマグチさんは、地下鉄に乗るのが苦しく、会社でもミスばかりしている――という具合に、この日の三人が経験する事柄と心の動きが、その時テレビや新聞を賑わしている出来事ともに綴られて行く。
1996年の5月1日、1997年の5月1日……と続いて2000年の5月1日まで、平凡な市民である三人に一年という歳月がもたらしたものが描かれるのと並行して、そのときどきの世相を反映するニュースの切り抜きが、効果的に挿入されていく。5年間という時間の長さ、あるいは短さと、その間の世相の変化の不気味さがじわじわと伝わってくる作品である。(2009.4.26記)
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by nishinayuu | 2009-06-30 10:15 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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