「ほっ」と。キャンペーン

『雷鳴』(梁石日著、幻冬舎文庫)

c0077412_9343732.jpg時は朝鮮全土が日本の統治下に置かれた1910年代。所は最南端の島・済州島。朝鮮総督府の統治下で、「土地調査事業」が進められていた。この調査は所有区画が不明確な土地、村の共有地などをすべて没収して国有地(=総督府の土地)とする、という日本による土地収奪事業だった。日本軍や国策会社(東洋拓殖株式会社)によって事業は強引に進められ、彼らの手先となり、彼らの威を借りてのし上がる者、彼らに協力することによって自分の土地を増やす者が現れてくる。一方で土地を失い、飢餓に苦しむ農民が大量に発生し、活路を求めて日本に渡る者も出てくる。そういう時代背景とともに一人一人の人間が、善人も悪人もひっくるめて、生き生きと描かれている。

主人公は両班(上流階級)の娘・春玉。18歳のときに有力な両班の家に嫁いだが、相手は10歳の子どもだった。こうした結婚は両班の間ではよくあることで、春玉の両親も母17歳、父10歳の時に、嫁ぎ先の尹家も母・貞姫19歳、父・宗玹8歳の時に結婚している。女たちは幼い夫のためにひたすら働き、子どもを育て、老いていく運命だった。しかし、春玉は芯の強い女性で、春玉を虐げることによって自分の憂さを晴らしているかのような姑にも、未熟で横暴な夫にも決して心を許さない。また、春玉は正義感の強い女性で、下働きの女性の協力を得て「農民暴動の首謀者」とされた男を匿い、逃亡を助ける。そして前向きに生きる女性でもある春玉は、自分の人生を切り開くために婚家を捨てて旅立つのである。(2009.4.9記)
[PR]
by nishinayuu | 2009-06-16 09:34 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/11760148
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 『丘の家のセーラ』(R.E.ハ... 『かあさんをお願い』(申京淑著) >>