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『われらの歪んだ英雄』(李文烈著、藤本敏和訳、情報センター出版局)

c0077412_9264194.jpg韓国の作家・李文烈が1987年に発表し、同年、韓国の芥川賞に当たる「李箱(イサン)文学賞」を受賞した作品。
時は自由党政権が最後の気勢を振るっていた1959年。ソウルの名門校から田舎町の国民学校に転校してきた5年生の少年が、学級を支配する怪物少年に抵抗して孤軍奮闘した末に諦めて傘下に入るまでの半年間と、怪物少年のその後を描いたもの。田舎の学校の教師たち、生徒たちとその父母のすべてを見下しているような語り手の少年にも、怪物少年を学級から追い出すことでことを終わりにしてしまった「有能な教師」にも、もちろん怪物少年にも共感できないため、読後感はすっきりしない。それはともかく、歪んだ時代が生んだ歪んだ英雄と無力な群衆を描いた、強烈な印象を残す作品ではある。
この作品は1992年に映画化され、日本でも公開されている。非常に後味の悪い映画で、その後長い間怪物少年の名前・ソクテが頭から離れなかった。今回原作を読んでみて、映画が原作の雰囲気を忠実に再現したものだったとわかった。
この本には他に『あの年の冬』というやはり重苦しい主題の作品と、『金翅鳥』というまったく趣の違う作品が収められている。著者は『金翅鳥』を、高校の教科書にでも使える、小説の手本みたいなものを書こうと思って書いたという。確かに、格調も高く読後感も爽やかな作品である。(2009.3.18記)
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by nishinayuu | 2009-06-02 09:26 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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