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『パリテギ』(黄皙暎著、青柳優子訳、岩波書店)

c0077412_1054491.jpg副題に「脱北少女の物語」とあり、確かに前半は北朝鮮の少女パリの生い立ちと、脱北の経緯を描いた物語になっている。しかし、この作品は脱北少女ひとりについて語ったものではない。彼女と同じく故郷から逃げ出したり、故郷を追われたりした、世界中の失郷者たちの物語なのである。
脱北したパリはまず中国に渡り、そこで知りあったシャン姉さんといっしょに「スネーク団」の密航船でイギリスに渡る。16歳だったパリはここで、さまざまな国から流れてきた失郷者たちと出会う。中華料理店のルーおじさん、ネイルアート店を営むベトナム人のタン社長、そこの従業員でバングラデシュ人のルナ姉さん、店の常連でスリランカ人のサラおばさん、アパートの管理人でパキスタンから来たアブドル爺さん、アパートの住人のナイジェリア人、スリランカ人、フィリピン人、ポーランド人などなど。彼らは国や民族や宗教の違いを超えた助け合いのネットを張り巡らせて懸命に生きていた。

巫女を祖先に持つ祖母から霊視能力を受け継いだパリは、人びとの隠された過去や、遠くで起こっていること、これから起こることなどを夢に見たり幻視したりする。これは年若く、見聞も狭いパリが、世界中のさまざまな出来事を把握していることにリアリティーをもたせるための設定であろう。一人の少女の目を通して世界の現状を見つめ、誰もが平和に暮らすために大切なことは何かを問う、メッセージ性の強い作品である。(2009.1.31記)
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by nishinayuu | 2009-04-28 10:46 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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