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『エンデュミオン・スプリング』(マシュー・スケルトン著、大久保寛訳、新潮社)

c0077412_9231754.jpg物語の主人公は二人の少年である。一人は15世紀のドイツ・マインツでグーテンベルクの徒弟として働いていたエンデュミオン・スプリング、もう一人は現代のイギリス・オクスフォードに滞在中のブレークで、この二人が交互に登場する。したがって時代も15世紀と現代を行ったり来たりし、舞台もマインツとオクスフォードを行ったり来たりする。
15世紀、マインツの場面では写本の時代を終わらせ、大量印刷時代の幕を開けたグーテンベルクと、彼の印刷所の様子、彼を取り巻く人びとの思惑や策略が描かれ、現代の場面ではボドリアン図書館をはじめとするオクスフォード大学内の様子やそこに関わるさまざまな人びとが描かれる。
そして二つの時と舞台を結ぶのは一冊の不思議な本、通称「エンデュミオン・スプリング」である。この本は15世紀の少年が偶然ドラゴンの皮でできた紙に触れたことから生じたもので、この世のあらゆる智恵を収めた『最後の書』に導く鍵となるものだという。大勢の人が血眼になって探し求めている「空白の本」はそうした人びとを退けて、無欲無心の少年であるブレークのもとに飛び込んでくる。
という具合に、魅力的な設定、魅力的な構成になっており、伏線めいた詩句も随所にあって期待を持たせるのだが、何か尻切れトンボのような感じで拍子抜けする。また、ウインターズ姓を持つ父、サマーズ姓を持つ母、フォール姓を持つジョリオン教授と「夏と冬が秋によりひき裂かれしとき」ということばとの関係など不明瞭なところも多く、読後感は「!」ではなく「?」だった。(2009.1.29記)
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by nishinayuu | 2009-04-23 09:26 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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