『眠りの兄弟』(ロベルト・シュナイダー著、鈴木将史訳、三修社)

c0077412_9313795.jpg時は中世の終焉期。舞台はオーストリア西部の因習と怨念に満ちた寒村エッシュベルク。この村のアルダー家に生まれたヨハネス・エリアスは、幼いころに異様な変身を体験し、それを機に特異な風貌と肉体、常軌を逸した鋭い聴覚と音感を持つに至った。エリアスは教会のオルガンによって独学で演奏と作曲を身につけ、人びとをその前代未聞の演奏で驚嘆させた。しかし神はエリアスに、音符に関する学問を学ぶ機会は与えなかった。しかも神はエリアスに、「愛への凄まじい情熱を憚ることなく賦与し給うた。その結果、彼の命は時期尚早に消耗したのである。」
エリアスの運命は第1章ですでに明らかにされており、第2章に死んだ偏屈な老人として登場するコスマス・アルダーは、エリアスが愛を捧げたエルスベートに「お母さん、愛ってなんだい」と呼びかける生意気盛りの少年として最終章に再び登場して物語を締めくくる。また、交響曲の「テーマ」のように、物語のあちこちに同じ文章がなんども繰り返して現れる。などなど、物語世界に入り込んでじっくり味わうのにふさわしい凝った構成になっている。
訳者によるとタイトルはバッハ教会カンタータ作品番号56『我喜びて十字架を背負わん』第5曲のコラール「おお、死よ、来たれ。眠りの兄弟よ」からとられている。著者自身、オルガン作曲法を修めた音楽家で、演奏もするという。(2009.1.24記)
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by nishinayuu | 2009-04-14 09:33 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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