『パズルの迷宮』(ファン・ボニージャ著、碇順治監訳、沢村凜・ITT訳、朝日出版社)

c0077412_17215789.jpg著者の原作をもとに作られた映画のノベライズ版で、原作とはかなり違ったものになっているという。さて、その内容は――
新聞掲載用のクロスワード・パズルを作成して生活している主人公のもとにある日、明後日に掲載されるパズルの6段目にARLEQUINES(道化師たち)という語が入るようにしろ、という電話が掛かってくる。要求に従わなければ後悔することになる、という脅し文句とともに相手は、主人公や家族についてつかんでいる情報を述べ立てる。「道化師たち」という語はとんでもない陰謀の合図に使われるのかも知れないけれど、従わなければ家族に危害が及ぶかも知れない、と主人公は思い悩むが、結局いわれたとおりの語を入れてなんとかクロスワード・パズルを仕上げて新聞社に送る。パズルは掲載され、翌日その解答も載った。そしてそのあと、地下鉄で毒ガステロが発生する。2年前の1997年に東京でオウム真理教が起こしたものとそっくりの事件だった――。

本書のはじめのほうでは、主人公が文学趣味のあふれるクロスワード・パズルを作成する過程などが語られていて、クロスワード・パズルそのものが主題なのかと期待させられる。ところが話はどんどんパズルから逸れて行き、主人公のルームシェア相手の男、新聞社で資料調べをする女、私立探偵、精神科医、そして「道化師たち」の間で右往左往する主人公が描かれる。主人公はいつのまにかロールプレイイング・ゲームに巻き込まれていたのだった。

原題はNadie Conoce a Nadie(誰も誰のことも知らない)。主人公とともに読者も、最後まで誰を信頼するべきかわからないままに迷宮の中を彷徨うことになる。(2009.1.13記)
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by nishinayuu | 2009-04-02 17:22 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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