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『街の灯』(北村薫著、文藝春秋)

c0077412_9454751.jpg「虚栄の市」「銀座八丁」「街の灯」の三部からなる連作小説集。語り手の花村英子は華族や士族の令嬢たちも通う女子校の生徒。英子の父親は財閥系の商事会社の社長で爵位はないが、級友の有川八重子は伯爵家の令嬢、桐原道子は侯爵家の令嬢。英子を含めて、いずれも大邸宅に住み、学校には運転手付きの車で通うお嬢さんたちである。そして彼女たちは、サッカレーや森鴎外を語り、シューベルトやクライスラーを聴き、歌舞伎にも映画にも精通している教養あふれる人びとに囲まれて優雅に暮らしている。

「虚栄の市」は江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』が絡んだ、あまりお嬢様にはふさわしくない感じの話。男装の麗人である別宮さんが初めて登場する。「宮様方では(パパ、ママが)おもうさま、おたたさまとなる。大声で父親を呼ぶと、思うさま、おもうさまを呼ぶことになるわけだ」というおやじギャグが笑える。
「銀座八丁」は英子が別宮の協力を得て、兄・雅吉が友人から出された暗号文を解いてあげる話。戦前の銀座の町並み描写も読ませどころのひとつとなっている。また、別宮の文武両道ぶりが少しずつ明らかにされていく。
「街の灯」は舞台を軽井沢の別荘に移し、桐原道子の姉・麗子と婚約者である瓜生豹太が関わった事件が描かれる。別荘でチャップリンの「街の灯」の上映会をする、というやはり豪勢な話。(2008.12.17記)

☆興味深かったのは、桐原麗子が「街の灯」の最後の場面で、「真相に気づいたヴァージニアの顔に、ただ、言いようのない嫌悪と憎しみの色が浮かぶのを見た」と言っているところ。「嫌悪と憎しみ」は言いすぎで、「失望と哀れみ」程度にしておいたほうがいいように思いますが、注目に値する見方だと思いました。世の中には単純にハッピーデンティングだと思っている人もいるようなので。
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by nishinayuu | 2009-03-05 09:45 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by 藍色 at 2010-06-30 02:20 x
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