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『丹生都比売』(梨木香歩著、原生林)

大海人皇子(天武天皇)と鸕野讃良皇子(持統天皇)の子、草壁皇子を主人公とした物語。同じく大海人皇子を父とする大津皇子に、才知、武人としての力量、人望などあらゆる点で後れをとっていたとされる草壁。母である鸕野讃良皇女が大津皇子をはじめとする有力な皇位継承者たちを強引に退けて、なんとしても皇位に就けようとした草壁。生来病弱だったためついに皇位に就けないままに世を去った草壁。本書の中で鸕野讃良皇女の姉で大津皇子の母である大田皇女は次のように言っている。
「そなたは私の方の筋じゃ。私や、幼くして死んだ弟の建皇子の。大王家には二つの血の流れがある。大津やそなたの母は、その別の筋じゃ。そなたの母上は、小さいころから、昇る朝日のように強くたじろがず、迷いのない方だった。おじい様とそなたの母上はよう似ていらっしゃる。私は鸕野讃良を、恐ろしいと思うこともあったけれど……」
引用文中にある「おじいさま」はもちろん天智天皇。天智天皇、鸕野讃良皇女、大津皇子らは表舞台で活躍する器の人で、草壁皇子や自分は主役にはなれない人だと大田皇女は言うのである。そんな草壁を主役に、史実と幻想をない交ぜにした物語が繰り広げられる。(2008.12.11記)
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by nishinayuu | 2009-03-03 10:34 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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