『秋の花』(北村薫著、東京創元社)

c0077412_10125678.jpg落語家の春桜亭円紫が謎解きをするシリーズの3番目に当たる作品。『夜の蝉』と『六の宮の姫君』の間に位置し、語り手の「私」は文学部の3年生である。今回は「私」が円紫さんの助けを借りて、高校の後輩で、小学校の登校班以来の知り合いである津田真理子と和泉利恵に関わる謎を解明する話。
後輩の二人はいわゆる「御神酒徳利」で、文化祭の準備中に津田真理子が高校の屋上から転落して死んだあと、和泉利恵は魂が抜けたようになってしまっていた。転落事件は事故として処理されたが、「私」の許に、事故ではなく殺人だ、とほのめかすような文書が舞い込む。1回目は津田の書き込みのある教科書のコピーで、「見えざる手」という部分が赤い線で囲まれている。そして2回目の紙には「ツダマリコ ハ コロサレタ」と書いてあった。
かけがいのない友を失った衝撃から立ち直れない和泉利恵のために奔走する「私」ではあるが、それだけにかまけてもいられない。卒論の準備もあれば、一度落とした体育の単位を今年こそは取らなければならないし、仲良しのしょうちゃんや江美ちゃんたちとのつき合いもある。というわけで「私」は『フロベールの鸚鵡』を読み、トランポリンの上で跳ね、しょうちゃんたちと『野菊の墓』探訪に出かけたりするのである。謎解きと、賢い大学生の日常とが並行して語られる、悲しいけれど爽快な、しみじみとあわれでありながら溌剌とした楽しい物語。(2008.12.7記)
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by nishinayuu | 2009-02-26 10:13 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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