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『いづくへか』(矢川澄子著、筑摩書房)

c0077412_9204655.jpg2002年5月に自死した矢川澄子がさまざまな印刷物に書き残した文を集めた一冊。
「既刊の単行本や『矢川澄子作品集成』(1998年、書肆山田)、『ユリイカ臨時増刊号』(2002年、青土社)に未収録のエッセイを対象として、彼女の71年にわたる試行を跡づけることを念願して編集したものである」と編集付記にある。
第1章「いづくへか」には自伝的回想と身辺雑記、第2章「兎穴の彼方に」には美学・女性・少女論、第3章「心という園生」には童話・絵本・ファンタジー論、第4章「Words to remember」、第5章「わたしの一世紀」には1901年から1920年までの記録が収められている。
少女であること、女性であることを強烈に意識しつつ、それを武器にすることもそれに甘んじることもせずに、しなやかに生きた「知性の人」の声が全編に響きわたる迫力のある本である。文学作品への言及は当然のことながら古今東西の多数に及んでおり、優れた読書案内書にもなっている。(2008.11.18記)

☆自伝的回想と身辺雑記が収められている第1章の「町医者だったおじいちゃん」のなかに、「なにかこう書き手の目配りとか心遣い、息づかいといった、いわば文章の生理的リズムが、こちらのそれとぴったりシンクロナイズしてくれる。」という文があります。私にとってまさにそういう作品のひとつである宮沢賢治の『ポラーノの広場』のことが同じ第1章の「広場と遊び」にさりげなく言及されていて、ここまで読み進んだ時点で矢川澄子という人への関心が一挙に高まったのでした。
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by nishinayuu | 2009-02-06 09:20 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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