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『洞窟』(ティム・クラベー箸、西村由美訳、アーティストハウス)

c0077412_11265788.jpgラタナキリ国(カンボジアを思わせる国)の飛行場に降り立ったオランダの地質学者エイホン・ヴァフターは、その夜11時にとある駐車場に行くことになっていた。それまでの時間をつぶすために町を見物し、カフェで一休みする。通りを隔てた反対側のカフェに目をやると西洋人の女がいて、向こうもこちらを見ているようだった。「エイホンはそのおんながそこにいてくれて、なぐさめられるきがした」。
エイホンは麻薬密売人アクセルから預けられた麻薬入りトランクを駐車場に運ぶことになっていた。少年時代、夏のキャンプで初めて出合ったアクセルは、反抗と悪意の塊であり、それでいてだれもがつい惹きつけられてしまうカリスマ性を有していた。そんなアクセルに魅入られ、長い間アクセルから自由になれなかったエイホンだが、やがて少年時代からの夢を実現して地質学者になることができた。その立場をさらに堅固なものにするために渡米したいと考えたエイホンは、その費用を工面するためにアクセルの誘いに乗ってしまったのだった。

アクセルという悪魔的人物の存在が物語全体を暗い陰で覆っている。しかし最後の最後に、少年時代のキャンプで訪れたアルデンヌの洞窟で自分の運命を決めることになったのはエイホンだけではなかった、という感動的な秘密が明らかになり、アクセルの影を吹き飛ばしてしまう。(2008.8.22記)
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by nishinayuu | 2009-01-17 11:28 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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