『Five Children and It 』(E・Nesbit著、 Gutenberg)
2009年 01月 15日
5人のうち一番下はまだ赤ちゃんで、そのまま「ベイビー」とか「ラム(子羊ちゃん)」と呼ばれている。上の四人――シリル(男)、アンシア(女)、ロバート(男)、ジェイン(女)はある日、近くの砂利堀場で、カタツムリのような目、蝙蝠のような耳をもった全身毛むくじゃらの生き物を見つける。気むずかしいこの生き物は、「サミアッド、平たくいえば砂の妖精だよ」となのる。サミアッドが、一日に一つだけ子どもたちの願いを叶えてやる、というので子どもたちは張り切って願い事をする。「美男美女になりたい」「金持ちになりたい」「翼がほしい」「お城に住みたい」……。思いついたときはすばらしい願い事だと思ったのに、実際に願いが叶ってみるととんでもないことになって、子どもたちは大あわて。それでも懲りずに新しい願い事を思いついてはサミアッドのもとへ。
妖精というとティンカーベルのような姿を思い浮かべる人が多いだろうが、サミアッドのようなへんてこりんなのも立派な妖精なのだ。シングの『アラン島』に出てくる妖精もそうだが、妖精の条件は姿形の美しさではなく、人間には不可解でときには恐ろしい力を持っていること、なのだ。(2008.10.22記)
☆インターネット・図書館のGutenbergで読みました。日本語版は『砂の妖精』(石井桃子訳、福音館文庫)があります。