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『ファティマの幸運』(ジョーン&ジェリー・ドリアンスキー著、岸本葉子訳、小学館)

c0077412_8532775.jpgプロローグは「八月二十七日。パリは数日前から雨だった」という文で始まり、まずラシダという女性が登場する。「浅黒い肌をしたチュニジア生まれの三十代半ばの女性で」(ワードでこの文を書くと《修飾語の連続》と指摘される---笑)すらりとした人目を引く美人である。当然彼女が主人公かと思って読んでいくと、プロローグの終わりのところで彼女は消えてしまう。ラシダはまさにプロローグでしかなかったのだった。

本文の主人公ファティマはラシダの姉である。四十歳、夫に逃げられてひとり暮らし、背が低くぽっちゃりというかでっぷりした体型、おまけに字も読めない。そんなファティマのところにフランスから電報が届く。差出人はラシダの雇い主だったプレ・デュ・ロック伯爵夫人。ラシダが気に入っていて、ラシダなしでは暮らせなくなっていた夫人が、ラシダの後釜にとその姉に白羽の矢を立てたのだった。ファティマがラシダとは似ても似つかない人間だとは思いも寄らずに。
こうしてチュニジアのジェルバ島から一歩も出たことのなかったファティマが、パリの高級住宅街ヴィクトル・ユゴー通りにやってくるのである。はたしてファティマは右も左もわからないパリで、しかも気むずかしい伯爵夫人のもとでうまくやっていけるのだろうか。

もちろんうまくやっていけることはタイトルを見れば一目瞭然。安心して楽しめる、大人のファンタジー。(2008.9.15記)
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by nishinayuu | 2008-12-11 08:53 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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