『老いて男はアジアをめざす』(瀬川正仁著、バジリコ)

c0077412_20114847.jpg副題に「熟年日本人男性タイ・カンボジア移住事情」、帯に「第二の人生を、物価の安いアジアの国で。あわよくば若い女性との出会いも……」とある。

定年後、あるいは老後の第二の人生を海外で、というのがひところ大いにもてはやされた。気に入った国にロングステイし、現地の人と交流しながら現地の文化を満喫するという、人の羨む第二の人生を送っている人たちが雑誌やテレビで紹介されたりもした。多くは年金がたっぷりあって言葉もある程度できる、日本で暮らしていても中の上の暮らしができるような人たちの話だった。 
しかしこの本に登場する人たちの多くは、乏しい資金でよりよい暮らしをするために、さらに独り身の侘びしさを解消するために、物価が安くてしかも性産業が盛んなアジアの国々に流れていく熟年・老年の男たちである。彼らがいかに楽しく暮らしているか、あるいは夢破れて惨めに暮らしているかを、著者は一人一人に密着取材して紹介している。成功者を持ち上げることもしなければ、失敗者を貶すこともなく、事実や背景を淡々と紹介していく。

この淡々とした事実の羅列から見えてくるのは、著者が彼らをそのまま受け入れ、彼らの生き方を肯定的に見ているということである。あとがきにもこうある。「この本を読んだ単身男性たちが、第二の人生をアジアで送ることを一つの選択肢として、より広い視野に立って、これからの人生の可能性を見出す一助になれば幸いである」。
高齢化社会に対する日本政府の無策ぶり、経済格差を利用する醜悪さ、普遍的な女性蔑視・人格無視などが無批判のまま置き去りにされていて、後味はよくなかった。(2008.9.11記)
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by nishinayuu | 2008-12-06 20:11 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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