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『海に帰る日』(ジョン・バンヴィル著、村松潔訳、新潮クレストブックス)

c0077412_1074823.jpgアイルランド生まれの著者による2005年のブッカー賞受賞作。

美術史研究家である「わたし」は、寂れた海辺にある昔「シーダーの家」と呼ばれていた家にやってくる。かつては2週間または月単位で借りられるサマー・ハウスだったその家に、あの年、グレース一家がやってきた。たくましくて粗野な感じの父親、官能的な母親、口のきけないひ弱そうな少年マイルスと、少年の双子の姉で気むずかしく気まぐれなクロエ。そして双子よりずっと年上の少女ローズ。少年のわたしは、初めは母親に、やがて同年配のクロエに惹かれて、一夏をこの身分違いの一家とともに過ごしたのだった。
大人になった「わたし」は、恵まれた育ちの女性と出会い、平穏な人生を送ってきた。その妻が「自分のような人間は罹るはずのない病」で亡くなったあと、なにかに引かれるようにやって来た「シーダーの家」で、妻との真新しい思い出と、遙か昔のあの夏の思い出が交互に、あるいは重なるように「わたし」の心を捉え、揺さぶる。

繊細でありながら強靱な糸で紡がれた、しなやかでしっとりした織物、といった印象の作品。(2008.8.31記)

☆かつての「シーダーの家」には今、ミス・ヴァヴァソーという管理人がいます。「わたし」のことを覚えているというこの管理人はもしかしたら、と思ったらやはりそうでした。さて、いったいだれでしょう。
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by nishinayuu | 2008-11-27 10:16 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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