『Mists of Dawn』(Chad Oliver著、 The John C. Winston Company)
2008年 11月 13日
主人公のマーク少年は、叔父であり育ての親であるドクター・ナイが作ったタイムマシーンに乗り、ふたりで古代ローマに行こうとしていた。ところが出発の準備をしているときに、ちょっとしたした手違いから一人きりで古代ローマよりはるかに遠い過去――50000年前に飛ばされてしまう。普段着のまま、食料も水の用意もないまま、マークはネアンデルタール人やマンモスの住む土地に放り出されたのである。
ネアンデルタール人たちに狩られてタイムマシーンからどんどん離れてしまうマークの運命やいかにというスリルと、人類の夜明けの描写のおもしろさで読ませる小説であるが、主人公のマークが話の途中で死ぬわけはないので、スリルのほうはほどほどで、主眼は人類学の研究成果をいかした人類の夜明けの地球はどんなだったかである。時代をネアンデルタール人とクロマニヨン人が入れ替わる時期に設定し、ラスコーの洞窟壁画と思われるものも登場させている「人類学的SF」である。
なお、島朝夫の訳で『地球の夜明け』というタイトルの日本語版が1956年に石泉社から出版されている。(2008.8.14記)