『ピアノ・ソロ』(ジャン・エシュノーズ著、谷昌親訳、集英社)

c0077412_10313179.jpgふたりの人物を描いたカバー絵が滑稽な雰囲気なのでお気楽な小説かと思いきや、重くはないけれども決して軽くもない、なかなか読み応えのある作品だった。

舞台はパリ。物語は、「二人の男が、ローマ通りからやって来て、クールセル大通りの奥に姿を現す」という文で始まる。二人というのは、なにかをひどく怖れて黙り込んでいる白髪の男と、怖れを忘れさせてやるために絶え間なく話し続ける年下の男である。年下の男はもう一人をモンソー公園に導き、音楽家や詩人の像の間を通りながらもショパンの像は巧みに避けてひとまわりしたあと、ヴァン・ダイク通り、オッシュ通りを抜けてとある建物に連れて行く。そして広く暗い空間に辿り着いたとき、もう一人の男の背中を勢いよく押す。男が押し出された場所は聴衆のあふれる音楽会場の舞台の上だった。男は、ここにいる以上、弾こうじゃないか、と居直って弾き始める。ショパンのピアノ協奏曲第2番を。

つまりこの二人は、演奏会恐怖症のピアニストとその世話係だったわけで、このあとピアニストの日常、彼の関わっている人たちのことが語られていくのだが、三分の一ほど読み進んだところで突然彼は暴漢に襲われて命を落としてしまう。ここまでが第1部。このあと第2部、第3部、と依然としてこのピアニストを主人公として奇想天外な物語が展開していく。

主人公の人物像がなかなか面白い。パリの描写も魅力的。テンポよく話が進んであきさせないし、後味も悪くない。訳者のあとがきによると凝った仕掛けがいろいろあるようだが、細かいことにこだわらずにさらっと読んでも充分楽しめる。(2008.8.9記)
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by nishinayuu | 2008-11-08 10:31 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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