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『六の宮の姫君』(北村薫著、東京創元社)

c0077412_9352053.jpg主人公の女子大生が落語家・円紫師匠とコンビで謎を解いていく推理シリーズの一冊。2007年11月に『朝霧』を読んだときにこの作品の存在を知り、早く読みたいと思っていたので、図書館で見つけたときは嬉しかった。(いちおう北村ファンですが、本を買って手元に置きたい、というほどのファンではないのです。悪しからず――いったい誰に向かって言っているのか不明ですが)。

さて、本書は芥川龍之介とその周辺の文人たち、特に菊池寛についてのエピソードがいっぱいのお話。今回の謎解きは円紫さんにはほとんど手を借りずに主人公が一人でとりくむ。なぜ芥川かというと、文学部の4年生の主人公が卒論のテーマに選んだのが芥川だからである。それで主人公は芥川の著作はもちろん、芥川に関するものなら何でも集めて、片端から読破していく。なにしろこの人は並の学生では考えられないものすごい読書力と理解力の持ち主なのだ。これはこの作品を書いている時点の著者の姿がそのまま投影されているものとしか考えられない。まさかとは思うが、若き日の著者の投影だったりして。
いずれにしても主人公の旺盛な好奇心、機動力、理解力、もの知りぶりにはあきれるが、主人公を取り巻く人たちはさらに上を行く博識ぶりを見せつけてくれる。友人の正ちゃんとのやりとりも、くだけた言葉の中にも知性があふれていてなかなかいい。嫌みのない、どこまでも心地よい蘊蓄小説である。(2008.8.7記)
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by nishinayuu | 2008-11-06 09:35 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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