『ベルリンの壁の物語 上』(クリストファー・ヒルトン著、鈴木主税訳、原書房)

c0077412_16582588.jpg冷戦時代の象徴であったベルリンの壁がいつ、どんな経緯で築かれ、いつ、どんな経緯で崩されたか、その間にどんなドラマがあったのかを、大勢の人へのインタビュー、多くの資料を駆使して綴った迫力のあるノンフィクション。

1961年8月13日に、西ベルリンの周囲の境界線が鉄条網で封鎖された。それは外の世界の人びとにはもちろん、ベルリン市民にとっても「突然のこと」であったし、当の東ドイツ当局にとっても突然の思いつきのような措置だった。だから始めは「鉄条網」だったのである。が、とにかく東ドイツ当局は自国民が西側に流出するのを食い止めなくてはならなかった。国を作っていくのに必要な若者たちがとめどなく流出していたからだった。 鉄条網はあくまでも臨時のもので、やがてその場所に堅固な「ベルリンの壁」が築かれていくのである。
「壁」ができたために、西側へ脱出しようとする者は激減したが、ゼロになったわけではなかった。本書はそうした人たちについて細かく記録している。それと同時に、脱出の機会があっても脱出しなかった人たち、鉄条網を張り巡らすことに積極的に協力した人たち、壁のおかげで西側に惑わされずに自分たちの理想の国が築けると考えた人たちの証言も記録されている。東ベルリン市民の矜恃といったものも見えてきて、非常に興味深い。(2008.8.2記)
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by nishinayuu | 2008-10-30 16:58 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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