『At the Gate』(M.J.Closser)
底本=Project GutenbergのFamous Modern Ghost Stories
まず登場するのは毛足の長いエアデールテリア。つまり犬である。彼がとぼとぼと歩いていると大道の先に高さが天を衝くような広い門見えてきた。門の前には何千頭もの犬の群が集まって道のほうをじっといた。近づいてきたのが彼だとわかるとみんながっかりしてまた何かを待つ態勢に戻った。
イギリス生まれのブルテリアが彼に近づいてきて、親しげに話しかけた。「俺は君を知っとる!知っとるよ!」と言いながら、なぜか名前を聞くので、彼はシャンターのタムという名で、家の人たちにはタミーと呼ばれていた、と答えた。ブルテリアは「いい人たちだった。家の者の話をすっかり聞かせて欲しい」と言ったが、門には入ろうとしなかった。ブルテリアの話によると、この門は犬たちが自分の相手を見つける場所だという。相手が見つかれば、いっしょに門の向こうに行けるのだ。
そのとき、道をやってくる小さな姿に気がついて、すべての犬たちが興奮のあまり立ち上がった。その中の一匹、痩せこけた黄色の猟犬が子供を一嗅ぎして歓喜の吠え声をあげた。赤ん坊も猟犬を抱きしめた。猟犬は友達だった貴族風のセントバーナードに別れを告げて赤ん坊といっしょに門をくぐっていった。間もなくもう一つの出会いがあった。ボーイスカウトの制服を着た少年と雑種犬が門をくぐっていった。二人は知り合いではなかったが、犬が欲しいのに父親に許してもらえなかった男の子はここで自分の犬を見つけたのだ、とブルテリアが言う。エアデールが「父親と男の子というとどうも同情してしまう、うちには両方いたので」と言うとブルテリアが「男の子がいるのか?こりゃニュースだ」と驚いて跳ね起きる。これをきっかけに、ブルテリアがエアデールテリアのいた家の昔の飼い犬、ブリー爺さんだったことが明らかになり、二人の話が弾む。
メーテルリンクの『青い鳥』には人間の穏やかな死後の世界が出てくるが、本作には犬たちの生き生きした(?)死後の世界が描かれている。
(2024.1.9読了)